マーケティングプラットフォームって何?
生活者のデジタルシフトは様々なところで起きていて、代表的な事象としてスマートフォンの普及により「知人との会話の中で話題になった商品を、その場でポチる(購入する)」といった購買体験が当たり前のようになりました。
もはやスマートフォンがなかった生活が考えられないくらいに購買行動が進化しており、それに対応する企業のデジタルシフトも「待ったなし!」の状況です。
企業のデジタルシフトに必要不可欠なものの1つにマーケティングプラットフォームがあるのですが、
この定義はMicrosoft社のサイトによると「マーケティングの実務を支援するマーケティング ツールを総称(※)」したものとあります。
※引用元:https://www.microsoft.com/ja-jp/business/azure/iot_1607_08.aspx
これまでの大まかな時代の流れとして、
10年ほど前はオンプレミスで巨大な自社専用システムを構築する企業が多くありました。
自社独自の要望を満たしたシステムを実装できるメリットはあるものの、
カスタマイズ・保守運用に多大なコストがかかるデメリットもありました。
その解決策としてマッシュアップといった自社システムと外部サービスをAPIで接続した形で機能拡張してゆく取り組みが行われてきました。システム全体を組み合わせて作る事の始まりと言えます。
更に昨今では様々なクラウドサービスを「組み合わせる」と共に、
企業の成長フェイズや生活者の様々なニーズに臨機応変に対応してゆく為に「組み替え」ながら、マーケティングプラットフォームを構成する事が増えています。
様々な企業に営業してきた営業としての肌感覚からしても、中小企業は特にクラウドサービス(SaaS)を積極的に活用している事を実感しています。
つまり、生活者のデジタルシフトに企業が柔軟に対応してゆく為に必要な要件は「柔軟に組み替え可能」な事であり、その為にも各種クラウドサービスを組み合わせる事が前提になってきます。
その上で「自社ならではの最適な構成は何か?」を繰り返した結果が「最強のマーケティングプラットフォーム」であると、私は営業時にお客様へ申し上げてまいりました。
最強のマーケティングプラットフォームをどうやって構成するの?
わかりやすい正解は1つではなく、生活者と企業の関係性における現状や今後注力してゆきたい事から、優先事項を整理して取捨選択してゆく事で構成してゆきます。
例えば不動産・人材・メーカー、あるいはBtoB・BtoCといった様々な業界・業態がありますが、とりわけBtoB SaaSといった法人営業で特に汎用性の高い構成があり、私自身非常に参考にさせていただいている構成「THE MODEL」がありますのでご紹介させてください。
※引用元:https://markezine.jp/article/detail/27109
「THE MODEL」とはMarketo日本法人社長の福田氏がSalesforce時代に生み出した「継続した成長を実現する組織営業のベストプラクティス※」とあります。
※引用元:https://note.mu/tokuriki/n/n32afb6a1da44
これにより様々な進化を期待できますが、営業を担当していた私自身の実感として「営業プロセス」が劇的に進化しました。顕著だったのは「失注の資産化」です。
営業にとって失注はネガティブなものではありますが、視点を変えれば失注要因が時期によるものであったり、まだ課題が顕在化していない場合、お客様の期が変わったタイミングで最新の動向と共に再アプローチする事で「以前は計画になかったけど、色々話を伺って今期はチャレンジすべく計画に織り込んだ。ついては御社との取引を検討したい」となるケースが実際よくありました。
私の場合は特にアウトバウンドを主体とした新規開拓の営業だった為、初回営業段階で課題が顕在化しているケースは少なく、即受注となる事の方が珍しいです。
何度も営業して期を跨いでご発注いただける喜びと感謝の気持ちは大きいです。
その為「失注」自体はネガティブだったとしても、その後の受注可能性を持った重要な営業資産となり得ます。
同様に「THE MODEL」で言うところのマーケティング(※)側でも、せっかくホワイトペーパーをダウンロードいただいているにも関わらず、まだサービス資料請求に至っていないお客様に対して、アプローチする事もできます。
こういった行動を自動化できるのがマーケティングオートメーション(MA)の重要な機能です。
※マーケティング本来の定義はコトラー氏によると「どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること」としていますが、ここでいうマーケティングとはリードジェネレーション(新規見込み顧客開拓)といった狭義のマーケティングを指しています。
MA以外にもマーケティングプラットフォームの中で要となるのは、お客様の基本的な情報から接触してきた履歴を蓄積するCRMに加え、法人営業では特に商談管理を行うSFAがあります。
CRM/SFAで代表的なものにSalesforceがあります。
マーケテイング部分ではMarketo,PardotといったMA、各種集客施策の効果を測定する為にAD EBiS,GoogleAnalyticsといった効果測定。インサイドセールス部分ではオンライン商談を可能にし、インサイドセールス文化を啓蒙してきたbellface、更に今後はセールスイネーブルメント分野においても鉄板のSaaSが出てくるのではないかと考えられます。
図には記載ありませんが私が得意とする営業スタイルの基盤となるABM(アカウントベースドマーケティング)を啓蒙しているFORCASが加わる事もあり、Salesforceと連携する事で登録している見込顧客の各種情報を付加したり、過去の成約実績を元に類似企業を抽出するといった機能が特徴的です。
このようにBtoB SaaSのマーケティングプラットフォームは特にSalesforceを基盤にして必要なものを追加・差し替えしてゆくのが主流になっています。
これが例えば通販やホテルになると基盤から変わってきます。
というのもBtoB SaaSと比べると生涯顧客単価(LTV)が低く、顧客数も多いので、それに適したSaaSが必要になります。例えばカスタマーリングスがあります。
このように「THE MODEL」のようなベストプラクティスを元に自社の現状や今後のビジョンをアレンジ要素として追加してゆくのが、試行錯誤のコストを最小限に抑える意味でも、最も良い進め方と言えます。
自社でマーケティングプラットフォームを運用するポイントは?
最も重要なポイントは「進化(常に変わり続ける)」を前提に運用する点です。
というのも様々なSaaSを組み合わせた時点で一旦は最強のマーケティングプラットフォームになりますが、市場の変化や更なる成長の為に取り組んでゆきたい事が新たに出てきた際に、新たにSaaSを追加する事が必要です。
追加するだけだと煩雑な構成に成らざるを得ませんので、現状の構成を見直す事も必要になってきます。
つまり常に進化しつづけている状態が最強と言えます。
こういった取り組みを進めてゆくには、様々なSaaSを駆使する「デジタルリテラシー」も然ることながら、お客様とのファーストコンタクトからロイヤルカスタマーまでのプロセスを改善する「お客様目線」も必要です。
極論は「役割と責任を明確にする」事に尽きるのではないでしょうか。
企業のマーケティング責任者として最高マーケティング責任者(CMO)、システム観点からだと最高技術責任者(CTO)や最高情報責任者(CIO)といったポジションがあります。
また最近『宣伝会議(2019年11月号)』高広氏の記事によると、最高顧客責任者(CCO)といったポジジョンを設置するケースが増えてきており、これまでの「企業のビジネスプロセス」から「顧客の体験プロセス」に基づく組織づくりを啓蒙しています。我々に更なる進化を考えるきっかけを提供してくれています。
まとめさせていただくと、最強のマーケティングプラットフォームに必要な事は、
①市場の変化・自社の進化に対応できるようにクラウドサービスを「組み合わせ」る。
②「THE MODEL」のようなベストプラクティスをベースに自社のエッセンスを盛り込む。
③明確な責任者を設置する。これら3点となります。
以上、BtoB SaaSに偏った内容となりますが、皆様の「デジタルシフト」のお役に立てれば幸いです。
著者情報
株式会社船井総合研究所
ECグループ アソシエイト
横窪 勇太Yuta Yokokubo
明治大学政治経済学部を卒業後、2020年に船井総合研究所に新卒で入社。入社以来一貫してデジタルマーケティングに従事し、これまで、士業・保険代理店・自動車・食品・小売・不動産・専門サービス業のWeb・SNS広告運用、Webサイト・メディアサイト立ち上げ・活性化などを経験。2021年よりBtoB、BtoC向けのEC立ち上げ・活性化を中心に行っている。